知らないだけ、観たことないだけ。

部下育成の研修をすると、「やりたいことがない、という部下」「将来ビジョンは何もない、という部下」との関わりに難しさを感じている管理職の方々のお声をよく聴きます。
ありますよね。
私も、外部の人間として従業員の方々向けにキャリアコンサルティングやコーチングをすることがよくあるのですが、そういうお声を聴くことはもちろんあります。

やりたいことがない、ビジョンがない、という言葉を部下から聴くと、
「モチベーションが低いのではないか」「やる気がないのではないか」「ワークライフバランスのライフばかり重視しているのではないか」……
などなど、上司や教育担当は気をもまれるわけですが。

そもそも、人間ですから、いつもいつも、

モチベーションが高く、やる気に満ちて、ワークを大事にしている

とは限りません。そういう姿が「善」と決めつけてしまうと、それに当てはまらない方には「困った方」というレッテルを貼ることになってしまいます。

多様性を大切にする、というのは、こういう面でも「どんな在り方があってもいい」ということを受容することでもあるのです。

 

そこに加えて、ですね。
やりたいことが湧いてこない、ビジョンが観えない理由に、

自分の中に情報ストックがない

から、ということも結構あります。
「情報」というのは、知識的なものだけでなく、「体験」も含みます。

仕事に打ち込むとこんなに面白い
とか、
ワークもライフも充実して生きるのは楽しいことだ
とか、
そういう姿を観たことがない、触れたことがない方が、そのようなイメージを持つことはなかなかできません。

内側から湧いてくる動機には、材料が必要です。ただの、材料不足かもしれないのです。
そういう方には、まず材料を集めること(実際に触れてみること)が必要だったりします。

先日も、「これまで仕事はライフを充実させるために決まった時間にやれればいいと思っていた」という方が、情熱を持って仕事をする方に出会ったことで「自分も情熱を持って仕事をしたい!」と思うようになった、というケースを目の当たりにしました。
心が震えるような体験が、考え方を変えるのです。

言葉だけでは、人はなかなか動きません。
体験が人を動かし、バイタリティに火をつけるのです。