育成担当者になったら、知っておきたいこと

新人研修ラッシュの4月が終わると、新人の育成担当者(OJTトレーナー)向け研修の登壇が続きます。
人の育成における重要なポイント、最近の若手の傾向、効果的な面談法、どのような構えで「育成」に向き合ったらいのかなどを扱っています。
また、育成担当者の方々と個人面談をして、新人育成に関するお悩み相談をお受けするような仕事もしています。

7月も半ばをすぎ、そろそろ育成担当者向けの(上期の)研修などなどはひと段落いたしました。

 

私は自称・育成マニアでして、育成に関して興味が尽きないため、話したいことが溢れすぎてむしろ、何も書けなくなってしまいます(笑)。
本日は絞って、一点だけ。

この時期は、新人さんと育成担当者の人間関係づくりの時期ですが、ここで心の距離が近づくか、信頼関係が築けるかがかなり重要だったりします。
(いわゆる、「何を言うかよりも誰が言うか」。その後の指導が機能するかしないかの分かれ道なのです)

その際に邪魔をするのが「憶測」と「思い込み」です。

育成担当者のお悩みでよくよく、出てくるのは

●最近の若手は仕事よりライフ重視なのでどのように仕事を教えたらいいか
●ハラスメントが怖くて関わるのに躊躇する
●怒られ慣れていない人が多く現場に耐えられるか心配
●自己顕示欲が強く褒めないと動かない



などなど、「お察しします!」と言いたくなるような苦悶の声ばかりです。

一方、そうお感じになる根拠を詳しくお聞きしていくと、何かアクションをした結果を見て判断したのではなく、「どうもそうらしい」「そんな気がする」など、「憶測」であることが少なくありません。

ここで育成担当として冷静にならなくてはならないのが、

これは憶測や思い込みなのか?
それとも見立てや仮説なのか?

ということです。前者は、根拠のない予想。後者は、実験・実践・根拠に基づいた推測です。

たとえば、「今の若手は飲み会なんて嫌がるでしょ?」という一般論がありますが、ここ数年定点観測(同じ企業様で毎年登壇)していると、コロナ禍を経て潮目が変わったように感じることがあります。
以前は「先輩と飲みにはいきたくない」という声が多かったのが「先輩に飲みに連れて行ってほしい」という声がこの2年ほど聞こえるようになりました。
先生と生徒の上下関係が薄くなったフラット化、コロナ禍でのサークル活動などの禁止などによって、「上の人に面倒みてもらう・かわいがってもらう・世話してもらう」というような経験が少なくなっているようです。

昨年のデータですが、こんなのも
https://www.biglobe.co.jp/pressroom/info/2023/05/230517-1

とあるビジネスパートナーの若手社員さんは「先輩とごはんに行きたいんですけれど、自分から誘うと『おごってもらおうと思っているのでは?』と思わせたら嫌だなと思ってなかなか言えなくて……」と言っていました。
はい、もちろん、おごりましたよ、ワタクシ(笑)。

とはいえもちろん、これもある角度でみた景色ですから、すべてに通じる話ではありません。

こんなデータもあります
https://www.fnn.jp/articles/-/680851

つまるところ、「人による」わけで、その「人」とは、目の前のその、新人さんなわけです。
その人を知り、自分のことも知ってもらい、踏み越えるのに躊躇する壁にちょっとずつでも足をかけながら、近づいていく。
育成の仕事に必要なのは、ある種の勇敢さではないかと思うのです。

毎年、育成担当者の方に講師自己紹介でお伝えするのは、
「ようこそ、この深遠なる育成の世界へ!」
という言葉です。
人相手の仕事です。「新人」と言っても、人それぞれ個性が違います。
どのように成長していくかも人それぞれで、どのように開花するかは未知数です。
可能性の詰まった玉手箱を、ともに開ける感覚を味わえるのが育成担当者の楽しみだと私は思っています。

また、育成の仕事をすると、結局は自分を観て、磨き続けるしかないということを思い知らされます。
結局は、自分に返ってくるのですね。

––人は人によって磨かれる

 

それをありありと体感できるチャンスです。

育成担当は、単純に見れば「仕事が増える・負担が増える」とも言えます。
ならば、ご自身のキャリアにとって良い機会として活用していただきたいものです。