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一人ひとりが「自分を丸ごと活かす」ために

時代背景「VUCAワールドのキャリア自律」

 現代社会を表現する「VUCA(ブカ)」という言葉があります。「Volatility(変動性)」「Uncertainty(不確実性)」「Complexity(複雑性)」「Ambiguity(曖昧性)」の頭文字をとってつくられた用語で、2010年代に入って以降、ダボス会議をはじめ世界の経済界で語られるようになりました。2020年のコロナショックは、まさに多くの方がVUCAを実感した出来事といえるでしょう。前例など無く、刻一刻と状況が変化する中で、「来週どうするか」「明日どうするか」の判断をせまられた方々も少なくないはずです。
 
 VUCAワールドにおける人材育成で重要なことは、「キャリア自律」。予測可能な社会では、上司の強いリーダーシップに導かれ社員全員が同じ方向を向き、掲げられた目標に向かってタスクをこなしていけば成果があがり、キャリアラダー(キャリアのはしご)を登っていくことができました。しかし上司はもちろん、誰も正解を出せない今、社員一人ひとりが自らのキャリアを自分で考え、創っていくことが必要な時代に入っているのです。加えて近年の日本では、終身雇用や年功序列の終焉も関連するトピックだと言えるでしょう。「会社任せのキャリア」から、「一人ひとりが自分のキャリアにコミットし、組織と良い関係を築く」のが、望ましいキャリア開発の姿です。

 「ホリスティック・キャリア®」とは、そんな時代背景において、人が「自分」というリソースのすべてを磨き、育み、高めていくために重要な「コンセプト」であり「羅針盤」としてご提案するものです。

課題と提案「左脳偏重から一歩、進む」

 人が「自分というリソースを磨く」には、どんな観点が必要でしょうか。
ある角度から見ると、私たち人間は「あたま・こころ・からだ」を持った存在だと言えます。しかし、ビジネス現場では「感情的になるな」と「こころ」を悪者にし、「理性的に考えろ」と「あたま」を良いものとして扱うような言葉がよく聞かれます。また、「からだ」は仕事を遂行するための「従属する機械」のような扱いを受け、時に鞭打って動かされているようなこともあります。ロジカルに考えること、理性的であること、前例やセオリーを活用すること、計画を立てること……あたま、とくに左脳的な活動がビジネス現場では重視され「過ぎている」傾向がないでしょうか。

 「自分というリソースを磨く」とき、「自分」がどんな存在かをあらためて見直してみるといいかもしれません。私たちは、「あたま」だけでなく、「こころ」も「からだ」も持った存在です。私たちの知性(リソース)は、あたまだけではなく、こころにも、からだにも宿っているのです。たとえば、米国・イェール大学学長のピーター・サロベイ博士とニューハンプシャー州立大学教授のジョン・メイヤー博士は、「EQ(またはEI=感情知能)」の重要性を「感情知能は人間にとって根源的に大切で、実社会で成功し、心豊かな生活を送るには必要不可欠なものである」と訴え、IQ偏重に警鐘を鳴らしています。

また、近年では「身体知能・身体知(ソマティック・インテリジェンス)」の分野が注目を集め、心身を統合するソマティックワーク(からだを使ったワーク)を取り入れるビジネスパーソンが少しずつ増えています。これは、物理的なからだ(フィジカル)を「鍛える」という発想ではなく、「内側から感じる身体(ソマティック)」というアイデアのもと、感性を磨く方法としても研究されているものです。なお、2010年代半ばにムーブメントが起き、ビジネスシーンに定着しつつある「マインドフルネス」は、ソマティックワークのひとつです。

 「あたま」だけで生きるとは、人間の持つ可能性のほんの一部だけを使い、なんとかやりくりして目の前の広大な世界を乗り切ろうとするようなものです。「あたま・こころ・からだ」のすべてにアプローチすることで、一人ひとりが本来持つ可能性にアクセスすることができるのです。

ポイント「自分を超える視野を持つ」

「キャリア自律」というと、個人それぞれが自分の思うままに生きる、ともすると「独りよがり」な行為に感じてしまうかもしれません。ですが、私たちは組織の一員であり、社会の一員であり、世界の一員です。自分を取り巻く「環境」にも意識を向けながら自らを育む、という観点も忘れてはなりません。

また、提唱者・渡辺はキャリア開発の領域に約20年身を置いてきた中で、「『死ぬ』ということもキャリアのひとつではないか」という気づきを得、数年前からその探究もはじめています。キャリアの研修やコンサルティングの場面では、異動や結婚・出産、離婚、昇進昇格、転勤など多くのライフイベントを扱い、同時に「まるでずっと生き続けるかのように」対話が進みます。ですがあらためて考えてみると、私たち誰もが等しく体験するライフイベントはたった2つです。それは、「誕生と死」。誕生というライフイベントを終えた私たちが向かっているのは、「死」のみです。「死」について扱うのは、ビジネスの現場だけでなく一般的にも、不吉だとか、怖いとか、歓迎される話題とは言えないでしょう。しかし、多くの偉人たちが残している言葉には、私たちの心を揺さぶる何かがあるのです。

「明日死ぬと思って生きなさい、永遠に生きると思って学びなさい」
-政治指導者・マハトマ・ガンジー

「あと5年、命を与えてもらえるなら本当の絵描きになってみせるものを」
―浮世絵師・葛飾北斎、死の床にて

「死は人生の終末ではなく、生涯の完成だ」
―神学者・マルティン・ルター


また、肉体的な死に限らず、キャリア理論のひとつ「トランジション」では、キャリアの重大な移行期・過渡期を「小さな死」と表現しています。身近な例でいえば、異動や転職、役職定年なども、狭義のキャリアにおける、狭義の「死」です。「死」は、私たちの日常にいつも存在する、とも言えるでしょう。 「死」を意識することでむしろ、私たちの生命エネルギーは躍動へと導かれます。終わりを受け入れることが、目の前のキャリアに向き合う姿勢の質を、大いに変えていくのです。

「ホリスティック・キャリア®」とは

「全体として機能する自分」を育て、組織・社会を含めた環境との相互作用の中で、自分自身を活かして生きていく道のりのこと。
キャリア自律がもとめられる現代において、一人ひとりが「自分を育む」技術を身につけ、
自分も組織もwell-being(充実した良い状態)となることを実現します。

holistic
あたま・こころ・からだの全体性アプローチにより、人それぞれの生命の躍動(エネルギー・活力)が出現する。そんな「活力ある個人」だからこそ、環境(組織、社会、自然環境)と相互作用しながらより良い貢献ができるようになります。 また、「精神性・霊性(スピリチュアリティ)」とは、日本のビジネスシーンでは馴染みの薄い概念ですが、成人発達の研究分野では、発達のプロセスに重要な役割を占める概念のひとつとして扱われます。「究極の自己と超越した存在に出会う」という意味合いを持ち、人間の究極の体験のひとつと言われています。「究極の自己」とはユング心理学でいう「個性化」と同じく、真正の自分に近づいていく自己実現のプロセスを指し、「超越した存在」は「自分の力ではどうにもならない大いなる存在」であり、「それへの畏怖の念」が人の成熟に寄与すると考えられるのです。当社では、「死」に関する心理学やキャリア開発の理論を活用し、その一端にふれることからはじめています。